宇部高専発 学問のススメとは
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  第20回   2007年11月16日 宇部日報掲載
 電子のスピンと磁石
 電気工学科 准教授 仙波 伸也
 

 磁石に鉄の釘を近づけると、釘が引きつけられることは皆さんご存知でしょう。磁石同士でもN極とS極は引き合い、同極は反発し合います。鉄の釘が磁石と引き合うということは、鉄もやはり磁石です。しかし、アルミニウムや銅は磁石にはなりません。どうして鉄は磁石になるのでしょう。その前に、皆さんはコイルをご存知ですか。コイルに電流を流すと、コイルは磁石と同じ働きをするようになります。言い換えると、電流は電荷をもつ電子の流れですから、電子が円運動すると磁石になります(磁界を発生する)。
 
図1 電子のスピンと原子磁石のイメージ
 
 鉄も含めて全ての物質は原子が集まってできており、原子は原子核と複数の電子で構成されています。太陽の周りを地球が公転するのと同じように電子は原子核の周りを回っています。この電子の円運動によって原子もコイルと同じように磁石になっていると考えたいところですが、複数の電子の回転方向が異なるため、それぞれの磁石の働きが打ち消し合います。そこで、図1のように電子も地球と同じように自転をしていると考えると、この回転(スピン)により電子自身が磁石になっていると考えることができます。この自転が右回りと左回りの2種類に限定され、男と女のように電子は性別をもちます。原子の中の右回りと左回りの電子の数が異なると打ち消し合わずに磁石の性質が原子に残ります。このような原子の集合体が磁石になり、鉄がその一例です。ただし、原子の集合の仕方(化学結合)によっては磁石の性質が失われる場合もあります。
 さて、皆さんは日常生活でテレビや携帯電話などの多くの電気製品を使用していることでしょう。これらの機器に組み込まれている部品では電子がもつ電荷の流れ(電流)や蓄積(電圧)を制御しており、電子がもつ2種類の磁石の性質は利用されていません。2種類の電子を区別して制御することができれば、新しい機能をもつデバイスを作ることができます。例えば、図2のように磁石材料を組み合わせて、さらに磁石の向きを変えることにより電流の流れやすさを制御できます。近年、このような電子のスピンを活かしたデバイスの研究が精力的に進められ、例えば、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)が開発されています。MRAMは不揮発性(記録が残る)であり、パソコンに搭載されれば、電源を入れた瞬間に起動することができるようになります。待ち時間のイライラが解消されるのはもうすぐでしょう。
 
図2 2つの磁石材料を使ったスピン制御デバイスのイメージ
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