今日の佳き日に、ここ宇部市渡辺翁記念会館におきまして、第56回宇部高専卒業式ならびに第24回宇部高専専攻科修了式を挙行できますことは、本校にとりまして大きな喜びです。
御臨席いただきました保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。これまで大切に育ててこられたお子様が立派に成長し、式に臨む姿に感慨もひとしおのことと存じます。
5年間或いは7年間という長きにわたり、本校の教育・研究活動にご理解・ご協力いただきましたことに、厚く御礼を申し上げます。そして、本日、宇部高専から新たな一歩を踏み出す、本科生201名、専攻科生30名の皆さんに心からのお祝いを申し上げます。
皆さんの胸中には、在学中の様々な思い出が去来していることと思います。多くの先生や友人と出会いました。勉学や研究、クラブ活動に熱心に取り組み、高専祭やクラスマッチなどの学校行事にも積極的に参加しました。ロボコン、プレコンをはじめとする様々な大会、そして海外留学にチャレンジした人もいます。寮での貴重な集団生活も多くの人が経験しました。
新型コロナウイルスの流行が始まった2年前からは、あらゆる活動が制限され、想定外の不自由を強いられることとなりました。登校できない時期も続きました。このような状況下で過ごした皆さんには、大きな戸惑いや困難があったと思います。
しかしながら、皆さんは、厳しい環境を乗り越えて地道に成果を挙げ、本日を迎えることができました。その熱意と努力に敬意を表したいと思います。
新型コロナウイルスとの戦いはこれからも続きます。私は、これまでも皆さんに宇部高専の学生として責任ある行動をとるようにお願いしてきましたが、卒業後も社会の一員として、自分自身の行動を律することが求められます。一方で、新型コロナウイルスのパンデミックは、技術革新によるデジタル化の進展を加速するのみならず、人々の働き方や価値観までも変えようとしています。
このことは、現在、社会を支えている人々の知識や経験が十分には通用しなくなることを意味します。本校で身に付けた知識や技術でさえ、急速に陳腐化することが予想されます。皆さんは、知識や技術だけでなく、実践を通して論理的に思考し、課題に粘り強く取り組むことを学びました。そして学び続けることの大切さも理解していると思います。これからは、皆さんが自分の可能性を追求しながら、新しい時代を切り開いていく先駆者になってもらいたいと願っています。
現在、私たちは、極めて予測が困難な不確実な時代を生きています。新型コロナウイルスの蔓延のみならず、地球温暖化の進行、頻発する大規模な自然災害、人々の経済格差の拡大、そして、世界的な戦争の危機と経済の混乱など直面する課題が山積しています。このような危機的な状況において、私たちの一筋の希望は、苦しんでいる人や困難に陥っている人、或いは将来の子孫のために、世界中の多くの関係者や専門家、一般市民が手を差し伸べ、自己犠牲も厭わずに様々な形で戦っていることです。
人は助け合いながら生きています。皆さんがここまで成長できたのは、ご家族の愛情と、先生、先輩、友人など多くの人達の支えがあったからです。これからは、その恩を忘れず、大切な人を思いやる心を持ち、それを行動に移せる人になってほしいと思います。ただし、人を助けることは、容易なことではありません。これまで以上に多くの知識や技術を身に付け、自分に自信が持てるような実力を伴ってこそ可能になります。
先の見通せない社会に出ていくことに不安があるのは当然です。しかし、皆さんは宇部高専で何事にもチャレンジする精神も身に付けました。皆さんなら大丈夫です。逆境を乗り越え、周囲の人たちだけでなく、社会に貢献する高い志を持って自分の信じる道を歩んでいってください。
宇部高専は、これからも卒業される皆さんを応援し続けます。皆さんの今後の長い人生において、大きな壁に突き当たることもあるかも知れません。そんな時は是非学校に顔を出してください。皆さんのことを忘れない先生方が待っています。
最後に、本日の旅立ちの日にあたり、巣立っていく皆さんの健康と今後の活躍、そして輝かしい未来を心から祈念し、私の式辞といたします。
令和4年3月23日
宇部工業高等専門学校 校長 山川昌男